今回もサブタイトルが良い味を出していますね。

先週が「あれから」。今週が「これから」。
ケイトとエミリコの闘いが、新しいスタートを切ったことが良く表れています。

現実世界でもアニメ放送が始まりましたし、物語も作品そのものも「これから」が非常に楽しみになってきました。
私にとっても「これから」の3か月は忙しくなりそうですし、いよいよ本格的にシャドーハウス漬けの毎日となりそうです。(今更?)


さて、そうなると我らが主人公・エミリコにはビシッと決めて欲しいところですね。

普段は天真爛漫な少女ですが、第41話では王子様のような、第82話では勇者のような格好良い姿を見せていました。

やるときはやる。見た目からは想像できないジャンプ系王道主人公、それこそがエミリコです。


しかし今回のお話では、エミリコはこどもたちの中心でなんとも情けない姿を晒しました。

思わず出た台詞に、しまったという風に固まるエミリコ。

ところが、偽らざる自身の素を曝け出した彼女によって、こどもたちの棟の空気は一変します。


いつの世も時代が動く瞬間は予期せぬものです。そんなエミリコを見て、ショーンは彼女の持つ『資質』を見抜きました。

あるがままの姿で人を動かすことのできるエミリコは、誰しもが思い描く理想のリーダーなのかも知れません。


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こどもたちの棟に響き渡る鈴の音。

これは生き人形の生活空間のみでの合図です。第63話冒頭でも同じ描写がありました。


ということは、これは「喜びの会」を知らせる呼び鈴です。

早く珈琲が飲みたいとビリーとハンクが会話する後ろで、ショーンは額に汗を浮かべました。廊下で会ったエミリコも同じく頬に汗を浮かべています。アイコンタクトをする二人は、まさに「これから」やらねばならぬことに気を引き締めました。どちらも固く手を握り、緊張の面持ちです。


ラムが洗脳から解けていることは前回判明しました。そしてケイトのプランでは、同期の洗脳を解くことを優先目標としています。

ならば残るはルウとリッキーだけです。決死の“珈琲豆交換作戦”はこのためにあったといっても良いでしょう。ついでに他のこどもたちの洗脳が解ければしめたものです。ショーンはエミリコが取り換えた“特別な珈琲”が本物であれば大前進だと、その行方を見守ります。


まずはバービー。オリーから“珈琲”を貰い、嚥下します。まだ作戦が成功したかは判然としません。

次は恐らく星つき達でしょう。今回は描写されていませんが、第63話ではその後に他のこどもたちに珈琲が配られていました。

今回も少しの間があってから他のこどもたちの番となりました。いよいよです。まず初めに、第58話でエミリコの活躍を褒めていたシャドーの生き人形が珈琲を飲み下しました。


ところが、いつもなら珈琲を飲むと恍惚としていた彼は意外な反応をします。
珈琲を口に含むと、眉をひそめ苦虫を潰した顔をしたのです。

その表情に、笑顔を浮かべるエミリコとショーン。
片や、俯いたまま焦るオリーと、顔を見せずに立ちすくむバービー。

脇ではスージーが困惑しながら立っています。ベンはどんな様子か分かりません。

しかし恐らくは、星つきが第一に考えたことはスージーと同じでしょう。


「エドワード!なぜこれを渡したの!?」


スージーがなぜエドワードを呼び捨てにしているのかは不明ですが、誤植でないとすればそれだけ苛立っていたに違いありません。実際、星つきからすればケイトの企みなど知らないわけですから、エドワードが“特別な珈琲”を渡さなかったと考えるのが自然でしょう。
彼女は、このままではこどもたちの棟の統制が効かなくなると危惧しました。


そうしている間にも、続々とこどもたちは珈琲を飲んでは、しかめっ面で列を後にします。ルウもリッキーも、それどころか年長の生き人形も無言です。ショーンも口に含むや否や眉間にしわを寄せました。

周りを見渡すと、明らかにこれまでと違う反応を見せるこどもたち。ショーンは心の中で「いける!」と叫ぶと、作戦の成功を確信しました。


ところが、やはり星つきは一筋縄ではいきません。バービーは何が起きているのかいち早く察すると、ハンドベルをけたたましく鳴らしました。

生き人形としての有り方を、改めてこどもたちに問うバービー。一通り偉大なるおじい様を匂わす言葉を並べると、シャドーハウスへの感謝を忘れるなと一喝しました。


そんなリーダーの発破を聞いてすぐさま反応したのは、スージーです。彼女はバービーの言葉が終わると、これまで劇中で何度も聞いた『すす掃除の唄』を讃頌し始めました。


一人、また一人……。

その歌はやがて広間中へ伝播します。あっという間にこどもたちの大合唱となりました。その中にはルウもリッキーもいます。これまでと同じような高揚感が、こどもたちの心を包みました。


流石こどもたちの棟の指導者集団です。趨勢が決したと思われたところで、見事棟の統制を確保しました。


ショーンは、“珈琲”だけではない幾つもの策が弄された館の“洗脳”にたじろきます。これではどうしようもありません。どうすればみんなの正気を取り戻せるのか苦悩しますが、『頭脳班』のショーンでも有効打を編み出すことはできませんでした。


しかしこの時、星つきにとって誤算だったことがありました。

我らが主人公・エミリコが列に控えていたことです。


これがもっと早い段階だったらまだ良かったでしょう。星つきは幾らでもリカバーできた筈です。

ところが、残念ながらこの時点でこどもたちのほぼ全員が特別ではない“珈琲”を飲んでしまっていました。
(根拠はもちろんあります。冒頭で広間を俯瞰したコマを見てみて下さい。エミリコはかなり後方に並んでいます。)


図らずとも、エミリコのリアクションが最大限に発揮される状況下に置かれた大広間。こうなれば、あとはエミリコのワンマンショーです。ショーンが考えあぐねているまさにその時、エミリコが突破口を開きました。


「にがぁ~~~~~~~~~~~~~っ!!」


いつもでしたら劇中から台詞を抜粋する場合、正確に抜き出すのを基本としている当ブログですが、今回ばかりは完全に再現することができませんでした。それぐらい長い『~~~~~~~~~~~~』を以てエミリコは叫びます。その絶叫に、こどもたちの注目が金髪の美少女・エミリコに集まりました。


驚くショーン、目を見開くバービー。

口をぽかんと開けるオリーに、立ちすくむベン。

やや身を引く少女に、口に手を当て絶句する少女。


そして中心にいるのは、我らが主人公・エミリコ。


その様子を見てまたもや一喝しようとするバービー。しかし、残念ながら今度はそうはいきませんでした。

あれほどシャドーハウスに忠実だったリッキーが同意したからです。


第17話ではバービーに反抗するエミリコに対して、リッキーはバービー側についていました。にも関わらず、今回はそのリッキーが真っ先に賛同したのです。


それをきっかけとして困惑のさざ波が広がります。やがてそれは大広間中を覆うどよめきへと変わりました。今度はエミリコが口を開けて驚いています。


統制が取れなくなったこどもたちを、またもやバービーはハンドベルで制圧しました。しかし先ほどとは違いこどもたちの疑問を払拭するには至りません。そのまま会は解散となりました。


各々の部屋へと帰る生き人形達。

大広間で騒ぎを起こした主犯格(?)エミリコは、ただでさえ小さい体を更に縮こまらせながら廊下を歩きます。主人のケイトに迷惑をかけてしまったと意気消沈です。

確かに、その直前にはアイコンタクトを交わすダグとミアが描かれていました。今回の騒動は十中八九エドワードへと伝わることでしょう。それを考えると、あまりに派手な顛末となったことは否定できません。


しかしそれ以上に、エミリコの事を評価している人物がいました。

ショーンです。

言葉を掛けないものの、肘でエミリコに触れると、よくやったと言わんばかりの笑顔を向けるショーン。流石ナイスガイです。その心はエミリコに伝わっていることでしょう。(伝わっていないとしても、それはそれで美味しい)

読者にとっても、お披露目のダンス直前を彷彿とさせるシーンに自然と笑みがこぼれます。
流石ナイスガイ!(二度目)


ショーンは満足した足取りで廊下を見渡します。エミリコによって、これからのこどもたちの棟は変わると信じ切っているようです。きっと部屋ではジョンと意気投合したことでしょう。「流石ケイトだ!」「流石エミリコです!」と言い合う二人がいた筈です。う~ん、めっちゃ見たい!!


しかしここはシャドーハウス。
二週続けてほっこりとしたラストなど許してはくれません。

ジョンとショーン、ケイトとエミリコが今回の成果に喜んでいたであろう丁度その時、部屋の中で一人困惑する生き人形がいました。


大広間で、いの一番にエミリコに同意したリッキーです。


汗だらけになりながら、やっとのことで部屋に帰ってきたリッキー。よろめきながらベッドへ腰かけます。一体何があったのか本人でも分かりかねているようです。


しかし肘をついて手に顎を載せると、ようやく落ち着いたのか一言こう呟きました。


「俺の名前が…パトリック?」


自身の名を「ジョン」と確信したショーン。
自身を「ケイト」と呼ぶ声を思い出したエミリコ。


とうとうこの二人以外に、館の真実の扉を開く生き人形が現れました。

果たして“リッキー”とよばれる“生き人形”にはどんな過去があったのでしょうか。そして彼は何を見てしまったのでしょうか。

こどもたちの棟をとりまく「これから」は、ショーンが思うほど容易くはいきそうもありません。