先日の『王様のブランチ』での紹介や無料公開の影響で、再びシャドーハウスが注目を集めていますね。

本ブログも多くの方に見て頂けているようです。
わざわざ足を運んで下さり感謝申し上げます。


こうなってくると「次にくるマンガ大賞」のノミネート落選がつくづく惜しくなってきますが、過ぎてしまったことは致仕方ありません。

小説家・村上春樹氏だって芥川賞を逃しましたが、それをものともしない活躍で今や国民的作家へと登りつめました。

タイトルの獲得は名作であることの十分条件であって必要条件ではないのです。

後に「芥川賞が村上春樹を取りこぼした」と言われているように、シャドーハウスも将来「過去に例のない不思議な人気の広がり方をした」みたいな感じで語り継がれて欲しいですね。


さて、連載2周年を目前にして慌ただしくなってきましたが、実は昨年の今頃も少しだけシャドーハウスが話題になっていました。

何故かといいますと、お騒がせシャドー・ジョンが煤パンチを繰り出したのが丁度一年前なんですよね。

「次にくるマンガ大賞2019」の入賞圏外(昨年はノミネートされてました)で危機感を募らせた読者の方々が、ジョンの衝撃的(笑劇的?)行動を目の当たりにして活気付いていたのがつい最近のようです。
夏の終わりはシャドーハウスにとって運気が良いのかも知れませんね。


そんな運気と連動しているのか分かりませんが、あの時は庭園迷路でお披露目中だったケイト組とジョン組の2対。

彼女らを取り巻く環境は大きく変わりましたが、一年前と同じくケイト達が立っている場所は館の外でした。


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愛する者からの贈り物で、元気百倍になったジョン。
意気揚々と庭園を駆けます。

状況は変わっていないと冷静なケイトですが、ジョンはお構いなしです。
持ち前の行動力で水路へと向かいました。

ジョンが水路へと走ったのは、こびりつきの弱点が水だからです。
何らかの方法でこびりつきに水をかければいいじゃないかと思い立ち水場へと走りました。


ところが、やはりジョンです。
アイディアは良かったものの、どうやって水をくみ上げるかまでは考えていませんでした。
ケイトにあっさりと論破されます。

そして、そんな風に立ち止まっている間にもこびりつきの追跡は止まりません。案の定取り囲まれてしまいました。


ケイトはここで暫し思案します。

この状況を打破するにはいくつか方法があります。

一つ目は、こびりつきを1匹ずつ水路に落とす。
二つ目は、すす能力で攻撃して減らす。
三つめは、エミリコ&ショーンの援軍を待つ。

しかし一つ目と二つ目は焼け石に水です。
マリーローズのことですからまたこびりつきを増やすでしょう。

それに、切り札のジョンパンチを使ってしまったら今度こそジョンは行動不能になります。
すす能力の無暗な使用は避けたいところです。

すると、残る選択肢は三つ目のエミリコとショーンの到着を待つしかありません。

ですが、ケイト曰くそれも難しい状況とのことです。
何故かというと、本来打合せしていた待ち合わせ場所から離れてしまったからだそうです。

窮地に陥ったケイトは煤を出し始めてしまいました。


しかしそんなケイトに閃きを与えたのは、ジョンの何気ない一言でした。

「頭を冷やせ!」

ケイトはその言葉を聞くや否や、ジョンの手を引き水路に飛び込みました。
こびりつきに水をかけるのではなく、自分たちが水の中にいれば安全です。
コロンブスの卵のような発想で二人は一旦危機を脱しました。


ただ、これは一時しのぎです。
根本的な問題は解決していません。

水路の中を水びだしになって歩きながら、ケイトはそもそもの原因となった星つきに怒りを募らせます。

第67話の時と同じく、拳で水を叩いて「冗談じゃないわ!」と声を上げるケイト。

ケイトは普段冷静ですが、結構こういう時は激情家な部分が垣間見えますね。
もしかしたら、ジョンと一緒に行動するにつれて段々影響され、感情を表に出すようになったのかも知れません。
過去のケイトの行動を振り返ってみると感慨深いものがあります。


しかし影響されているとはいえ、ケイトはやはり常識人です。

このやり取りの直前、男気を見せて「肩車でもしようか?」語りかけたジョンですが、あえなくケイトに拒否されました。ケイトからすればそんな行動は淑女として許せないでしょう。
語気を強めて「嫌!」と言った台詞が彼女の心中を表しています。

ただジョンは、ケイトがジョンパンチを頼りにしていることを知って大喜びです。実に良い後ろ姿です。肩車を拒否されたことなどすっかり忘れていそうです。

そんな能天気なジョンについていきながら、エミリコとショーンに思い馳せるケイト。エミリコに会うためには、もう彼女の洞察力と行動力に賭けるしかありません。

水路で一人、ケイトは合流を願いました。


そんな主人の思いが届いたのか、目を凝らして森の中を見渡すエミリコ。
その眼差しは真剣です。
おまけにその下にはショーンがいます。

こちらは何の躊躇いもなく肩車で偵察していました。

同期の中で背の高いショーンと目の良いエミリコですから、こういう時は良い組み合わせですね。

お披露目の時と同じようにラムもいれば言うことなしですが、残念ながらサバイバルテクニックに長けた彼女はいません。なんとも惜しいです。


二人は庭園を探索すると、水路の脇に一つのパンを見つけました。
ケイトが置いていったパンです。

濡れるからいけないと置いていったものでしょうか。
それとも、第52話のショーンと同じく、エミリコなら目ざとく見つけるとケイトが信じて置いたものでしょうか。

ケイトがパンを置いていった意図は見えませんが、その状況からエミリコは二人が水路を歩いて行ったと推理しました。


しかし、ここでエミリコとショーンは主人に危機が迫っていることに気が付きます。

先ほど肩車をしながら見つけた複数のこびりつき。
彼らの狙いは、水路を歩くケイトとジョンだったのです。

一刻の猶予もありません。
エミリコは靴に忍ばせた地図を広げると、陸上からケイト達の元へ先回りしようと水路の行き先を探し始めました。


しかし、ここでエミリコとショーンは一つの選択に迫られることとなります。
なぜなら水路の行方は3つに分岐してしていたからです。

広大な菜園と眠りにつく館、そしてお披露目のゴールと酷似した噴水……。

主人達がどこに行ったのか頭を捻るエミリコとショーンですが、そうしている間にもケイトとジョンに危険が押し寄せているかも知れません。

エミリコはケイトの身体を気遣い、風邪をひいてしまうのではないかと心配で身を震わせました。


従者が主人の安否を案じる中、ケイトとジョンは逞しく戦っていました。
正攻法では敵わない相手に対し、ケイトは陽動作戦に打って出たのです。

内容は、
①ケイトが囮になって逃げる。
②こびりつき達を噴水近くに引き付ける。
③ジョンパンチを水面に放ち、水飛沫でこびりつきを撃破する。

という、偽装撤退や釣り野伏せに近い戦術です。

ただこの作戦のリスクは、一歩間違えば囮が犠牲になる可能性が高いことと、タイミングを外すと二人とも各個撃破される危険性があることです。

案の定、体力のないケイトはあっという間にこびりつきに追いつかれてしまいました。


しかしここからがジョンの見せ場です。

ケイトが噴水の近くまで寄るや否や、瞬時に水路の階段を上り噴水に目がけてジャンプしました。

走ったこととジャンプしたこと、そして何よりも密度が濃く量も多いジョンのすす能力。

運動エネルギー・位置エネルギー・質量エネルギーが最大に発揮されるこれ以上ないシチュエーションで、残すは主砲・ジョンパンチの炸裂を待つだけです。


しかし、その主砲が火を噴くことはありませんでした。

地面から突然現れた、巨大な手。
マリーローズのすす能力です。

実は、マリーローズはこびりつきを生み出し操るだけではなく、各個体の動向まで把握できる能力まで持っていたのです。

スザンナも第50話で煤をセンサーのように操っていましたが、それよりも一枚も二枚も上手のすす能力です。

こびりつきを陽動していたと思い込んでいたケイトですが、皮肉にもケイト達自身がマリーローズによって陽動されていました。

ケイトとジョンを握りしめる巨大な手。
やがてその本体たる亡霊が、地面から怪しく生えてきました。

絶体絶命のピンチです。
そして、非情にもマリーローズからレッスン終了の宣告が告げられました。


命を賭して行われる、班長の「最後の授業」。

ケイト達にはもう策は残されていないのでしょうか。
そして、エミリコ達はもう間に合わないのでしょうか。

勝者の存在しえないゲームのフィナーレが、もうそこまでやってきました。